大阪・関西万博に登壇!チーム早慶城が新時代の治療法を世界に向けて発信

2025.07.17

現在、大阪・夢洲で開催されている大阪・関西万博では、異なる地球的課題をテーマにさまざまなイベントが展開されています。6月20日から7日1日のテーマは「健康とウェルビーイング」。このコンセプトと連動したイベント「HEALTH DESIGN 輝き、生きる。Live Brighter」において、厚生労働省の展示ブース「新時代の治療法~再生医療の最前線~」の講演イベントにチーム早慶城が招待されました。

日本再生医療学会総会金賞の喜びから2か月

3つの異なる高校の学生で編成されたチーム・早慶城が順天堂大学を訪問してから約2か月後、彼らの培ったアイデアは第24回日本再生医療学会総会の中高生のためのセッション(アドバンストコース)で見事金賞を受賞しました。今年は万博の年でもあったことから、学会で優秀な成績を収めた個人やチームには万博会場で登壇する機会が与えられ、チーム早慶城の4人は日ごろの学業と両立しながら入念な準備をして万博に臨みました。

▶順天堂大学訪問の様子はこちらから

万全な体調ではない中、チームで支え合い、ベストを尽くす

チーム早慶城のテーマは「CRISPR-CasΦと免疫寛容の融合による、より正確で安全な遺伝子治療の実現」。最新の遺伝子改変技術CRISPR-CasΦと当センターで研究中の免疫寛容の仕組みを合体させた画期的な遺伝子治療のアイデアです。

チームリーダーの本田伊紗也さん(早稲田大学高等学院2年)を中心に、本田さんの小学校時代の同級生・北川和歩さん(海城高等学校2年)、塾時代の友人・岡本憲眞さん(慶應義塾志木高校2年)、高校の同級生・河口丈一郎さん(早稲田大学高等学院2年)の4人で結成されたチーム早慶城は、先天性の遺伝子疾患をもつ本田さんのひたむきな努力と向上心を求心力に結成されました。

チームリーダーの本田さんは登壇の一週間ほど前に体調を崩し、当日も万全ではない中での参加となりましたが、メンバー全員で支え合い、無事にこの日を迎えることができました。

壇上では、万博という大舞台に緊張した様子もありましたが、学会とは違い、順位がつくものではなく、観客も一般の人々ということもあり、普段の4人らしい穏やかな表情を垣間見ることもできました。

大舞台を終えて

「思った以上に人がいましたが、こんな機会はもう一生に一度だと思うので、こういった貴重な経験がみんなでできて本当によかったと思います。」(河口さん)

「万博という舞台で、先生たちや学会という場ではない、一般の方たちに向けて自分たちのアイデアが広められる機会がいただけてすごくありがたいと思いました。夢見心地な感じです。学会の時よりも緊張せず、みんな言いたいことを言うということは達成できたと思うので、満足しています。」(北川さん)

怖気づくどころか、舞台を踏むごとに成長するチーム早慶城の4人。当初、登壇の前に予演(予行練習)を行う予定でしたが、アドバイスだけで学会の時よりもレベルアップしたパフォーマンスを見せた4人に、副センター長の内田浩一郎先生も「彼らはどんどん成長していくね」と教育者としての喜びを口にしていました。

「自分は、リーダーの信念とか、今まで積み上げてきたものに、本当にここで発表していながら感動して、何度も泣きそうになりました。ずっと昔から子どものころの想いや夢を叶えて、ずっと願い続けて、これからも積み上げていこうとするところに感動しましたし、このチームに呼んでくれたことへの感謝を改めて強く実感しました。」(岡本さん)

3月の学会の発表でも泣いてしまったと語る岡本さん。病気で小学校にはほとんど通えず、自分で自分の病気の治療法を探し、決して諦めない本田さんの頑張りをより近くで見ていたからこそ、込みあげてくるものがあったのだと思います。そしてその涙は会場の人々の共感を誘い、このアイデアとこのチームが生まれた背景の深さを多くの人が知るところとなりました。

チームであるということ

「近い将来、この提案が遺伝子疾患の治療に革命を起こし、遺伝子疾患の完治を実現できると私たちは確信しています。そして、私たちのチームリーダーを、SKJ-101によって治療される世界初の成功例第一号にしたいと思います。」(チーム早慶城講演より)

自分の病気を治したい。大切な誰かのために新しい薬を作りたい。

創薬にこれ以上強いモチベーションが存在するでしょうか。よく、人は一人では生きていけない、支え合うからこそ人なんだと言われます。厳密に言えばそんなことはないのかもしれません。ですが、今回の4人の活躍と彼らがチームになることによって生まれた相乗効果に間近で触れ、誰かが誰かを思いやる気持ちこそが社会に変革をもたらすために必要なエネルギーであることを肌で感じることができました。

「体調はあまり優れませんでしたが、ちゃんと立てて、自分の心からの発表ができてよかったです。本当に早慶城のみんなのサポートのおかげです。そして順天堂大学のみなさん、早稲田大学高等学院のみなさん、そして日々サポートしてくれている家族のみなさんのおかげだと思います。ありがとうございました。」(本田さん)

万博の意義、そして、輝き、生きる。

なぜ万博を開催するのかという問いに、次のような答えがありました。

「万博は目的じゃない。ただの手段です」(『大阪・関西万博公式ガイドブック』より)

新しい出会い、偶然の出会いが誰かの人生を変えてしまうことは多々あります。そしてその誰かによって世界がより良くなり、それがまた別の誰かのアイデアになる。オンライン全盛の時代に現地開催の場を設けることにはそのような願いがこめられているのだと思います。チーム早慶城の発表では、彼らの話に何度もうなずく人、足を止めてじっと聞き入る人、スライドの写真を何枚も撮影する人など、さまざまなリアクションをする人々がおり、この中には、この日を契機に何かが変わっていく、何かを変えていく人が含まれていたかもしれません。そして、それに触れた別の誰かが何か新しいことを思いつき、それがまた別の誰かの人生を変える。それが世界に広く開かれた万博の醍醐味なのだと思います。

「世の中には治療法のない病気で苦しんでいる人々がたくさんいます。しかし、その病という暗闇の中でも、治療法の研究は患者さんとその家族にとっての希望の光となります。そして、その希望の光があれば、暗闇の中でも「輝き、生きる」ことができると思います」(チーム早慶城講演より)

大阪・関西万博のサブテーマである「Saving Lives(いのちを救う)」「Empowering Lives(いのちに力を与える)」「Connecting Lives(いのちをつなぐ)」。これはまさに本田さんとチーム早慶城が、本田さんをはじめとした遺伝子疾患の患者さんのために起こした行動と重なります。そして、このイベントのテーマ、「輝き、生きる。live Brighter」。チームリーダーである本田さんの生き方そのものです。彼の行動力に、きっと会場にいた多くの人が心動かされ、勇気づけられ、それはやがて難病に苦しむ患者さんへの深い理解へと繋がっていくことでしょう。私たちもそんな希望の光を一つでも多く灯せるよう、研究を続けていきたいと思っています。

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