免疫抑制剤フリーを実現するため、各分野のエキスパートが連携

2021.11.16

「肝移植において誘導型抑制性T細胞(JB-101)を使った免疫寛容」プロジェクトでは、実際に患者さんに向けて治験を行う医療施設以外にも、さまざまなグループが新しい治療法の確立を目指して日々業務に携わっています。今回は基礎研究グループ、製剤薬事グループ、治験調整事務局のスタッフの皆さんにお話を伺いました。

細胞療法ならではの工程を経験できる貴重な機会

基礎研究グループの大きなテーマは、JB-101が患者さんの体内でどのように働き、どのように免疫寛容が誘導されるのか、メカニズムの全容を解明すること。そのため、治験開始前はJB-101の安全性や品質に関するデータを取り、再現性などを確認する実験を繰り返しました。ボリュームのある実験が多く、データ量も膨大でしたが、患者さんに安心して使っていただけるものをお届けするため、データの精査や解析には細心の注意を払われています。


基礎研究ではマウスを使った実験が多いのですが、新しい発見があるたびに、メンバー全員が「これは免疫寛容のメカニズムに関わりがあるんだろうか?」「これを発見したことが患者さんのためになるかもしれない」と沸き立つなど、治験を経験したことで患者さんにより気持ちが寄り添うようになったそうです。基礎研究では臨床とつながる機会がなかなかないため、「貴重な経験を積ませていただいている」と口を揃えます。


「多くの実験やデータ解析を重ねてようやく辿りついた今回の治験を必ず成功させ、患者さんの助けになる研究開発を続けていきたい」と、メンバーの方が力強く語ってくれました。

基礎研究・製剤・品質保証・薬事の各チームメンバー

ガイドラインが確定しない再生医療等製品の承認申請に挑戦

製剤薬事グループのおもな業務は、JB-101の原材料や製造方法、非臨床データなどを書類やデータにまとめ、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に確認していただくことです。治験開始前には、PMDAと十分な議論をして、それらのデータに合意を得てまいりました。現在は市販後に安定供給するための対応事項について、PMDAと確認や協議を進めています。


メンバーのひとりは本プロジェクトに参加する際にJB-101の説明を受けたとき、「患者さんが免疫抑制剤から解放される夢のような治療法だ!」「承認申請に携われるのは非常にやりがいのあること」といい、一般的な医薬品とは異なり、製剤の原料として“患者さんの細胞”という「生もの」を扱わせていただくことを、「かつてない経験」と表現します。治験を終えて再生医療等製品として市販するためには、治験での製造実績が非常に重要となります。錠剤のような医薬品のようにガイドラインが確定しておらず製剤の特性に応じてケースバイケースで対応する必要があるなど、一つひとつPMDAと調整しながら進めなければなりませんが、そこに難しさと同時にやりがいも感じています。受け取ったデータは責任を持って承認申請につなげ、治験後は全国に安定供給できるようにサポートすることを目指しています。

現場と研究開発部門をつなげ、治験をスムーズに進行

製剤を適切に使用・評価できるように治験実施計画の作成を支援し、各治験施設で少しでもスムーズに遂行いただけるように日々調整に努めるのが治験調整事務局です。治験の窓口として現場の先生方やスタッフの方々、サポートいただいている先生方の貴重なご意見を集め、1日も早い治療法の確立につなげていくことが事務局の重要な役割。特に本プロジェクトでは治験施設の現場の意見を積極的に吸い上げられるよう、アフェレーシス対応や製品輸送、データの取り扱いの考え方など、他の治験ではできなかった経験を積んでいます。また、次の症例に向けて資料改訂が頻繁に発生するため、現場の方々とビデオ通話で打ち合わせをするなど、スピーディにアナウンスするためのコミュニケーションを大切にされています。その際、先生方のご意見を直接お伺いできるのもやりがいのひとつです。

現時点ではこの治療法は肝移植の患者さんが対象ですが、多くの疾患への応用が期待でき、本プロジェクトはその第一歩となるもの。「免疫抑制剤からの解放は医療を変えるほどのインパクトがあります。このような世界最先端のプロジェクトに関われることを誇りに思います」と語る言葉にも力がこもります。

治験調整事務局のメンバー

患者さんへのメッセージ

基礎研究グループ

一般的に基礎研究に携わる研究者は医療現場や患者さんと直接関わる機会があまりないのですが、本プロジェクトでは一つひとつの実験やデータ解析が患者さんの治療につながっていることを実感しています。JB-101を安心してご使用いただけるように、グループ全員でサポートしていきたいです。

将来は肝臓以外の臓器にも適用できるように、基礎研究に邁進いたします。

培ってきた細胞培養技術がJB-101プロジェクトにも活かされている。
製剤薬事グループ

患者さんを免疫抑制剤から解放する画期的な治療法の開発に携われることにやりがいを感じています。新しい治療法ですので、まだ国でも規定が定められていない部分も多く、一つひとつ内容を確認し、説明を重ねながら再生医療等製品への承認申請を進めています。

責任を持って承認申請につなげ、全国の患者さんのもとにしっかりと届けられるまで、地道な作業を続けていきたいです。

治験調整事務局

今回は肝移植の患者さんが対象ですが、多くの疾患の方への応用が期待できる治療法です。これからも現場の声を聞き、より実際の医療に沿った手順を確立し、お一人でも多くの患者さんを免疫寛容に導きたいです。

患者さんご本人はもちろん、ご家族やサポートされている方々の不安を取り除き、安心して毎日をお過ごしになれるよう、再生医療等製品の承認を目指して精一杯務めて参ります。

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